旅に魅せられて

旅をした一コマを文章と写真で紹介します。

ゴッホ作『アルルの跳ね橋』を訪ねて: アルル、フランス

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私がアルルを訪れたのはクリスマスの時期。街を歩いていたらアパートからクリスマスプレゼントがぶら下がっていた(写真上)

私はゴッホゆかりの風景を見るためある年のクリスマスにアルルを訪れた。アルルにはゴッホの作品を展示している美術館があるわけではないが、ゴッホが描いた風景は当時の面影を残こしている。

ゴッホがパリからアルルに到着したのは、まだ寒い時期であった2月20日。南フランスでは珍しく雪がまだ残っていた。

私がアルルを訪れたのも冬12月だったため、ゴッホが到着した頃と同じく色彩に溢れたアルルは見れなかった。春夏の時期だと強烈な太陽の光が見られるだろう。

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復元されたアルルの跳ね橋 (写真上)

今回紹介する作品と場所は、ゴッホによる美しい跳ね橋シリーズの風景。彼が跳ね橋を描いたのはアルルに春が訪れていた3月半ば頃。いよいよ色彩豊かな時期になってくる頃だ。

このシリーズは、アルル時代を代表するものの一つで、彼は跳ね橋をモチーフに4点の油絵、1点の水彩画、4点のデッサンを描いている。


故郷を想いながら


ところで、跳ね橋と言うと、フランスよりオランダを連想する。南フランスには、跳ね橋をはじめゴッホにオランダを思い出させる茅葺の家、風車、運河などがある。
オランダ人のゴッホは、ラングロア橋と呼ばれる跳ね橋を描きながら故郷を懐かしんでいたのであろう。

 

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ちなみにアムステルダムにある跳ね橋は写真上のような感じだ。ゴッホはアルルの跳ね橋から故郷を想ったであろう。

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ドーデの風車(フォンヴィエイユ近郊)(写真上)

ゴッホとは直接関係はないが、こうした風車は昔からプロヴァンスの生活にはあった。上の写真はアルフォンス・ドーデが『風車小屋だより』(1866年)を執筆した風車。

復元された跳ね橋

彼が描いた跳ね橋は、残念ながら20世紀前半に壊れたため現在は残っていない。その代わりに復元された橋が街から3キロほど離れた場所にある。車で連れて行ってもらったが、のどかな場所で、周りにも跳ね橋しか見るところもないような場所であった。運河もコンクリートになっていて、ゴッホが描いたような河原もないが、アルルにある跳ね橋という事で雰囲気は感じることができるだろう。
 

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『アルルの跳ね橋』(1888年)クレラーミュラー美術館(オランダ)
 
日本への憧れが画面に現れる

彼が『アルルの跳ね橋』を描いたのは前述したように南フランスの春3月だ。春の明るい雰囲気がよく表現されている。何より色彩が鮮やかだ。アルルでゴッホはいよいよ色彩を手に入れるが、ここには青い水面やオレンジの土手、黄色の橋などの鮮やかな色彩が現れている。

彼自身もようやく来た南の地気候の違いによって目の前に広がる色彩に夢中になり始めていたのかもしれない。

そして忘れてはならないのは、彼は日本への憧れでここアルルへやってきたということだ。
彼は、「ここ(アルル)では日本の作品は必要ない。僕は日本にいると思っているからだ。」と述べている。

彼の日本への憧れについては私の『夜のカフェテラス』のくだりでも紹介したが、ともあれ彼はアルルに着いた頃は一番幸せな時期だったかもしれない。

また、ゴッホは友人で画家のエミール・ベルナールへの手紙で、

「まず、この地方が空気の透明さと明るい色彩の効果のため僕には日本のように美しく見えるということから(この手紙)を始めたい。水が風景の中で美しいエメラルド色と豊かな青の色斑をなして、まるで日本版画の中で見るのと同じような感じだ。地面の色を青く見せる淡いオレンジの落日。華麗な黄色の太陽。」と述べている。

手紙の中でも色への感動がよく登場する。そしてそれは同時に彼が信じていた「色彩溢れる日本」への憧れでもあるのだ。


また、『アルルの跳ね橋』では広重の影響もよく指摘される。強い色の使い方がハーモニーを生み出してとても美しい色彩表現だ。また、描かれている日常風景もまたのどかで、浮世絵で日本の日常が描かれているのを知っていた彼は日本を意識していたかもしれない。


ゴッホはアルルで大きな夢を持っていた。画家の共同体を作り理想郷をアルルに出現させるという夢だ。同じ年の12月にそれは破綻するが、『アルルの跳ね橋』を描いた春の時期は、ゴッホの幸福感も感じられる。そして、ここから多くの傑作群が誕生するのだ。

私は復元された跳ね橋を見ながら、彼のそうした希望であったり、日本への憧れ、またオランダへの望郷などを想った。
 
Photo and Wrting by Hasegawa, Koichi