旅に魅せられて

旅をした一コマを文章と写真で紹介します。

パリ北駅 旅人が交差するところ

パリの北の玄関口である北駅 (Gare du Nord)。

ここにはロンドンから英仏海峡トンネルを通って高速鉄道であるユーロスターが発着するため、多くの観光客やビジネスマンが利用する。また、ブリュッセルからは高速鉄道タリス、そのほかアムステルダムやドイツなどから多くの国際列車が発着するインターナショナルな旅客ターミナルだ。

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高速列車タリスが駅構内に入ってくる(写真上)

駅構内を見ると、大きな荷物を沢山抱えた家族連れ旅行客が小さな子供たちを連れて歩いている。目を移すとロンドンから到着したのであろうか、スーツに身を包んだビジネスマンが颯爽と僕の前を横切っていく。その後ろにはパリの家族に会いに来たであろう老夫婦が出迎えの家族を見つけて笑顔で手を振っている。

様々な国の人がいろいろな目的でこの駅に降り立つ。

もう15年前になるが、僕のはじめてのパリも、ここ北駅から始まった。在英中にロンドンからパリにユーロスターを使って到着。北駅近くのホテルに泊まったのも懐かしい。

先日も妻とロンドンからパリへ移動した時にここを使った。この駅は、いつ使っても色々な思い出が蘇ってきて、僕にとっては思い出のある駅だ。いろいろな人とここで出会ったり別れたり。
北駅は旅人が沢山交差する場所だ。

 

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夕方のパリ北駅 (写真上)。駅構内の雰囲気がいい。
僕はある夏の日の夕方、北駅の向かいにあるビストロのテラスで、道行く人々を眺めながら夕飯を取っていた。とても気持ちのいい夏の日の夕方であった。
店のウェイターと話をしていたら、ちょうど日本人の老夫婦が入店してきた。
「いい夜だから、私達もテラスで食事をしましょうよ」とご婦人。テラスで食事をしていた僕が目に入ったのであろうか。ご婦人はご主人をテラス席に誘う。
日本人同士だから、とウェイターはニッコリ僕の隣にその老夫婦を案内してきた。
「隣すみません。」とご主人。
「どうぞどうぞ」と僕。
「日本からご旅行ですか?」と話かけて、和やかな会話を試みてみる。何か品のあるステキなご夫婦だったため、お話がしてみたかった。
「ええ、パリに来るのは、40年振りになるの。当時、この北駅の近くにあった小さなホテルに主人と泊まりまして。ちょうどこのビストロに寄る前に、まだあのホテルがあるか見に行ってきたところなのよ。」
「そうそう、そのホテルの名前は覚えてなかったんだけど、場所だけはうろ覚えで覚えてましてね。記憶を頼りに妻と今行ってきたところなんです。」とご主人。
40年ぶりに夫婦で訪れたパリ。何か心がほっこりする話だ。
「40年ぶりのパリなんですね!そのホテルはまだありました?」
「ええ、当時のままありましたわ。何も変わってなかったわ」とニッコリご夫婦で笑顔を交わす。
「素敵な話ですね」と僕。とても二人の様子が微笑ましくて、しばし僕はご夫婦が話をしているのを眺めていた。
するとご主人がその40年前に泊まったホテルの話をしてくれる。北駅の近くと言えば、映画や小説で有名な北ホテルのことですか?と聞いてみたら、違うとのこと。そのホテルは北駅からすぐの場所にあるらしい。確かに北ホテルは少し離れた場所にある。
「ホテルに寄ってみたら中をみたくなってね。妻とホテルの中を覗いていたら、ちょうどホテルの支配人が出てきてくれましてね。昔ここに泊まったことがあって、妻と40年ぶりにパリに来たから懐かしくなって寄ってみたんです、と言ったら、なんと当時泊まった部屋まで見せてくれましてね。」
「ほんと、当時のままで嬉しくなっちゃって。」奥さんも優しい笑顔で懐かしんでいるようだ。
「パリに乾杯ですね」とご主人。
3人でパリの夜に乾杯。
まさに一期一会の出会いであったが、この夜このご夫婦の40年ぶりの夜に一緒に乾杯できたことは、僕にとっても素敵な夜の思い出として残っている。
 
今もパリ北駅に着いて真っ直ぐにメトロに向かわずに外に出てそのビストロを見に行くことがある。僕にとってはこの北駅前のビストロがいつまでも思い出の場所になっている。

パリ北駅は旅人が交差する場所だ。

Photo and Writing by Hasegawa, Koichi